相互理解が介護福祉のクリエイティブを産むってこと

こんな経験ないですか?

 

「あなたの言っている事はとても正しい。正しいのはわかるんだけど、私は

 

そう、いかに構造的な問題を論理的かつ信頼性のある言葉で並べ立てても、

 

「頭ではわかっている」のだけれども「拒否してしまう」何て経験をされる方多いんじゃないかと思います。

 

そんな混沌とした中で「ただ何となく」ぼんやりと出てくる自分の意思(正当性)に希望を見出している状態に期待してしまっている時ないですか?

 

まさに直観ですね。

 

「論理型」と「非論理型」

 

私が今まで提示してきた事は文章にしてしまっている分、論理型に傾いている記述が多いように思います。

 

「分解とか分析とか、論理的に突き詰めていく思考」は、世界の有名な企業TOYOTAの「5つのWHY」からみてわかるように、日本人が大好きな思考のようですね。

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この掘り下げ型の思考は、機能的な完成度レベルを向上するにはすごく有効ですが、新しいコンセプトとか、大きなストーリーを構想するクリエイティブな事にはまったく向かないんです。

 

「論理型」の人は、
数字、信頼性、あとは再現可能性が高いことが大好きです。

 

「非論理性」の人は、
「面白ければいい」で、論理型の人から見た直感型の人のアイデアは、信頼性も、再現可能性もなくて、突っ込みどころ満載なんです。

 

「非論理型」の人からはイノベーティブな発想が出てくることも多いのですが、イノベーティブであるということは、すなわち不確実性とセットな訳で、

 

「不確実性の存在が不安で許せない」とか「詳細にわかっていないと気分が悪いという人」には耐えられない。

 

まあ、不確実性をゼロにするって、それこそ不可能なことなんですが。

 

組織で言うと、「論理型」になりがちなのが「経営陣」で、「非論理型」は現場の介護系職員に多いのです。

 

経営陣がいくら論理的な言葉を並べ立てても結論が「あなたの言っている事はとても正しい。正しいのはわかるんだけど、私は嫌。」で終わってしまう。

 

もうぐうの音も出ない感じで。

 

論理型の人だって、非論理型の人だって常に今の現状に満足している訳ではない場合、「何かしなければいけない」と創造的な事を求めるようになります。(仕事に追われてそれどころじゃないよと言う方も多いと思いますが。)

 

その為、チームを率いるリーダーやマネージャー、経営陣の方は「創造的な結果を得るには、論理思考と直感型思考の両方が必要だと理解する」事が必要になります。

 

クリエイティブを求める組織のトップには「論理と直感の2つの間に橋を架けるという姿勢」が必要なんですね。

 

つまりは、現場の職員が何か突拍子もないようなことを言っていても「うんうん」とうなずきながら、「私は直感的なメッセージ、イメージも受け止めますよ」という姿勢・職場環境を提供するってことが求められるわけです。

 

注意点としては、「論理型」「非論理型」の全く違う2種類の人を同じ場所に置くだけではなく、全員が両方を理解できるようになることが、成功の鍵なので、互いにどちらが向いているかをそれぞれ把握して頂くような研修の機会が必要だったりします。

 

お互いを知らないと連携が図れない。地域包括ケアも一緒ですね。

 

さて、一方的に非論理型の「直感的なメッセージ」や「イメージ」を受け止めるだけでは話は進みません。その発想の素地はどうしたって必要なんですよね。

 

その素地と言うのがいわゆる、「論理型」の構造的で論理的かつ信頼性もある「制約条件」。情報を可視化する事で見えてくるのは「制約条件」だったりします。

 

  • 食事はこの時間内に食べないといけませんよ。
  • トイレは大体この時間帯で誘導しますよ。それ以外の時間は人員がいないので対応できませんよ。
  • 人員の関係上、お風呂はこんな周期になりますよ。…etc

 

そこに「非論理型」の職員はぶつかってくれるわけです。

 

  • 「食事なんて自由に食べてもいいんじゃない?」
  • 「トイレなんて行きたいときにお手伝いすればいいじゃない!」
  • 「お風呂なんて昼間っから入る人なんていないじゃない!」…etc

 

こういった職員から意見を貰う度、論理型の人間(主にマネジメント職)の人達は今の職場の構造的で論理的かつ信頼性のある情報で納得してもらおうとします。

 

しかし、そもそも「非論理型」の職員はそんな所なんて見ていません。

 

彼等、彼女等は組織の質の向上なんて見ていないのです。

 

彼等、彼女等の見る方向は、あくまで支援をする対象者が「どういった生活がしたいのか」というコンセプトとストーリーなんです。

 

見るべきものは支援対象者の生活や人生ありきなんですね。

 

どんなに正しい事を言っても、人の人生なんて様々なのでそれこそまさに混沌としているけれども直感的なものだったりするわけです。

 

クリエイティブは「非論理性」から生まれ、マネジメントは「論理性」から生まれるとなれば、その相反する所をうまく融合させていく為に、それぞれの特性を知る必要があります。

 

「論理型」が好むものは「数字、信頼性、あとは再現可能性が高いこと」と伝えましたが、それはつまり「情報理解・客観的視点」と言い換えることが出来ます。

 

「非論理型」が好むものは「楽しい、おもしろい、好き」などの個人的な「主観的視点」です。主観的視点は、支援対象者の人物理解が進むことで感情移入を行い、支援対象者の視点から「主観的視点=人物理解」でものを考えることが出来るようになります。

 

大人がよく言う「相手の立場に立って考えなさい」ってことですね。

 

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「論理型」の「情報理解・客観的視点」のみで話が進めば、何か起こる(問題行動)と解決しようとしてみたり、そもそも「支援対象者を介護の対象物・症例としか見ていない為、支援対象者自身を見ていない。」なんて事が往々にしてでてきます。

 

介護の質があがったとそれで胸を張って言えますか?

 

勿論答えはNO。

 

相手の世界観をみとめ、被支援対象者の視点で主観的に考える事で、「被支援対象者は介護の対象物・症例ではなく、人である。」という事を再認識出来、何か起こる(問題行動)と解決しようとする事も大事だが、いかにして付き合っていくかを考えることが出来るのです。

 

認知症フレンドリーな社会についてが今、世界で注目をされています。

 

それは、「何か起こる(問題行動)と解決しようとする」という事だけにとどまらず、「それも大事だが、いかにして付き合っていくかも重要。社会がそれを受け入れる素地を作っていく必要がある」という共生についての考え方が取り入れられているからでしょう。

 

認知症の方に対して、進行の緩和・改善を行うことも必要であるが、認知症であっても問題のない生活空間を提供することも大切」という共生の考え方ですね。

 

「非論理型」の方はそういったストーリーをとても大切にします。

 

なぜなら、相手の立場に立つにはストーリー(物語)を共有する事が必要だからです。

映画を思い出してみてください。

 

映画のパンフレットには大切な情報がちりばめられており、ストーリーもある程度書かれています。もしくは映画を見たという感想のレビュー。これらを見て感動できますか?

 

感動するには、実際に喜んだり、興奮したり涙したりするには、やはり映画を見て、感情移入をする必要があるのです。そう、相手(映画の主人公)の立場(視点)に立って物語を見る(考える)事が必要なのです。

 

物語を共有する事で共感することが出来、それが被支援対象者との繋がりにもなったりします。

 

そういったそれぞれのストーリー(物語)を、マネジメントできるよう、その視点を活かしながら構造的な問題を再考し、論理的に考え、共有していく姿勢が介護には求められます。

 

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「論理性」と「非論理性」と言った、真逆の事象をうまく融合させながら、新しいものを創造していく様はまさにクリエイティブそのもの。

 

現在、介護のみならずクリエイティブかつイノベーティブな活躍をするには「機能・デザイン・ストーリー」の3つが大切だと言われております。

 

多機能ナイフを例として、かつては一つの物に沢山の機能がついていたものがもてはやされた時代がありました。

 

しかし、電子レンジやリモコンなど、多機能になればなるほど複雑になり使い勝手が悪くなります。

 

そこで新たにデザインにより「よりわかりやすく使いやすさ」を求めた商品が売れだしました。

 

そして物が溢れた今は「その商品がいかにして生まれてきたか、必要なのか」と言った生活に対するストーリーが売りになると言われています。

 

もちろん機能・デザインあってのことですが。

 

機能の洗練は「論理型」で可能であっても、「デザイン」や「ストーリー」は「非論理型」の方が得意なことが多いようです。

 

この両方を磨く場として、介護福祉の現場をとらえてみると新しい発見があるかもしれませんね。

 

出来れば管理者やトップの方は是非この考え方を参考にして頂きたいと思います。

 

勿論、現場で働く方々にも必須だとは思いますが。

 

度々出てきた研修の話。気になる方はクリエイティブケア研究会へどうぞ。

 

ではでは。